【すべてのはじまりは、ただ君を護るために】
『Memories Off』シリーズ最新作、『Memories Off -Innocent Fille-』が3月29日ついに発売となった。
本作は当初より「ラストメモリーズ」と謳われたシリーズ最終作。
「メモリーズオフ -Innocent Fille-」 PS4/PS Vita/Switch 好評発売中
本シリーズは恋愛ADVながら、他とは一線を画す恋愛やそのシチュエーション
~恋人がいるのに別の恋をしてしまう、恋人から振られるところから始まるetc...
を特徴とし、修羅場が名物とされる。
しかし今作の印象は、恋愛ADVというよりはサスペンス。物語で魅せるアドベンチャーゲームだ。
個別のヒロインのルートのような括りをするのが難しい部分があり、
「ギャルゲーだから・・・」として忌避するのはあまりにも惜しい。
第1作よりプレイし続けている身として、
またアドベンチャーゲーム好きとしても本作は外せないものだった。長くなります。
初回プレイ、「ライトサイド・グッドエンド」を終えて
「メモオフの明るいところをもっとライトに、重い部分はよりヘヴィに」
・・・というコンセプトのもと、物語は大きく2つに分けられています。
ライトサイドは、本作のメインヒロイン・嘉神川ノエル周辺の人間関係を描く。
明るいところをもっと明るくと言っていたが、扱う内容が「ノエルがいじめられている」という件で既に重い。
フランス人とのハーフであるノエルは、その見た目などからいじめの対象となっていた。割とえぐい感じの。
そんな彼女は「感情を透明」にし、箱にしまいこんで鍵をかけてしまっていた。
しかし、その鍵を開け、中に入ってくる人がいたら・・・。
大事なひとが出来て、その感情が動き出してしまったら・・・。
ライトなのに決して軽くなかったが、「メモオフらしい想い」が描かれていたシナリオだったと思います。
初回はライトサイド固定で、このエンドに辿り着きました。
ここで私は思いました。「なんか今作、『Remember11 -the age of Infinity-』っぽい」。
『Remember11』はあの『Ever17 -the out of Infinity-』の流れを汲む『Infinity シリーズ』で、
『Ever17』の際に出た「シナリオの順番を固定すべきか否か」という論争を経て、シナリオの解放順を決めた作品でした。
物語の順番が決まっている作品なんてごまんとあるだろう、と思われるかもしれませんが
何故か私は『Remember11』を想起してしまったのです。
そしてこの予感は確信へと変わっていくのでした。
「ヘヴィサイド Twinルート」へ
ヘヴィサイドは、本作の物語の「はじまり」、つまり核心へと迫るシナリオです。
三城莉一と三城柚莉、そして三城琴莉の三つ子がいました。
主人公・楠瀬累は琴莉が好きで、彼女もまた累のことが大好きでした。
彼らはいつも一緒に遊んでいて、まるで四つ子のようだと言われていました。
そんな日常は、7年前の「あの日」に崩壊。
三城家から火が上がり、累はその場に居合わせていながら琴莉を護れず失ってしまった。
そして三城家は引越し時は流れ、累は高校の特待生制度を利用し
莉一と柚莉のいる高校に3ヶ月間迎えられることとなった。
ある日、累は電車の窓からある少女を目撃。それは7年前に亡くなったはずの琴莉だった。
7年ぶりに果たした三城兄妹との再会が、全てを動かし始めてしまう。
実は柚莉はPTSDを負っていて、火事といった「あの日」に関連ありそうな事態に遭遇すると
パニックなどの症状を起こしてしまう。
そんな彼女の幸せは、「周りのみんなが幸せでいること」、そして「それを守ること」。
火事のショックで入院した三城兄妹の母親が、琴莉を求めたことをきっかけに
柚莉は琴莉の真似をしだす。それはついに交代人格として現れた・・・いわゆるDID。
つまり、累が見かけた琴莉は柚莉だったのである。
先程触れた『Remember11』には、DIDの少女が登場します。
そして私は発売前にこんな予想を立てていました。
メモオフIFは「オルタナティブ・ラブストーリー」。
— いりえ (@IriethotADV) 2018年3月8日
いつかどこかで「オルタナティブ」を謳うADVに触れた記憶があるんだけど、1人の中に2人の人格みたいなのがあって「どっちの私を選ぶの」みたいな選択を迫られるような、私ごときが予想できる展開にはならないよね
ちょっと複雑な想いでした。
しかしこれは、後ほど大きく裏切られることに・・・.。
この Twinルート はその名の通り、柚莉・琴莉の2人が主軸となり、
メモオフ第1作目のような、「過去との決別」が描かれていました。
『これはかけがえのない、そして譲れない、「願い(ワガママ)」。』
ヘヴィサイドのOPの最後に出てくるコピーですが、まさにこれが刺さる内容となっていました。
この時点でヘヴィサイドの虜となり、ライトサイドの別ルートが全然頭に入らない状態。
「好き」の気持ちがそこには確かにありつつも、重い想いが交錯する物語は
もはや恋愛ADVの枠を超えた、サスペンスとでも言うべき内容。
「重い部分はより重くする」と謳われた物語は只者じゃなかった。
閑話休題、ライトサイドの別ルート
志摩寿奈桜というキャラがおりまして、
彼女はノエルの親友でありながら、ノエルをいじめるグループが慕う人物の親友でもあり
板挟みでどうしてよいかわからない日々を過ごしていました。
そんな彼女の物語は、メモオフ2ndを想起させる修羅場が待っていました。
メモオフのライト層へ向けられたルートのようにも思えます。「ライトサイド」だけに。
個人的にメモオフの修羅場というと、 2nd の 白河ほたるvs飛世巴 や 想君 の 荷嶋姉妹 の印象が強いです。
新システム『R.A.I.N.s』と、選択肢の量
時折挟まる「Choose to Abandon」と表示される選択肢。
abandon とは「捨てる、見捨てる」といった意味で、「見捨てる方を選ぶ、二者択一の選択肢」です。
「選び取る方を選ぶ」のがこういったゲームの選択肢としては一般的だと思うのですが
今回はその逆を突いてくる選択肢が用意されました。
また、『R.A.I.N.s』では時間制限もあり、『サクラ大戦』などで時限付き選択肢に触れたプレイヤーにはおなじみの
「選ばないという選択」も可能です。
システム自体は個人的に真新しいものではありませんでしたが、「見捨てる方を選ぶ」というのは面白かったです。
捨てた側が砕け散る演出が入ってるともっとわかりやすかったかもしれない。
そして発売前からどうなるか不安だった、「選択肢の量」について。
このブログではPS4のADVを紹介する場を設けているのですが、そこでいつも「選択肢の少なさ」について言及しています。
アドベンチャーゲームの、ひいてはゲームの面白さは「選択」にあると考える私としては
この「選択」を最も純粋かつ深く体験することの出来るADVというジャンルで選択肢が少ないのは
とても嘆かわしいことです。
(と言っても、それらはPCからの移植なので、そもそもの用途が違うからとも言えるのですが)
今や新規タイトルが殆ど生まれないADVというジャンルで、メモオフもこの時流に流されて
選択肢が減少してしまうのではないか心配でした。
前作の発売は7年前ですから、そこから市場の状態も変わってしまっているでしょうし。
しかしその不安はあっさり払拭されました。
ちょっとの差分でも豊富に選択を用意してくれていて、何度も何度も選択を迷い、セーブを取りました。
過去最も多くセーブを取ったADVだったと思います。
こうして悩んだのは久しぶりで、「ADVってやっぱり楽しいなあ」と思わせてくれました。
そのままの君でいてくれて本当によかった。
そして真相へ
いくつかのヘヴィサイドのエンドを経て、真相が明らかになる最終ルートへ。
真実が明らかになってゆき、伏線が次々と回収されていくその様はまさに鳥肌物。
『Remember11』っぽいな、と思っていたところに全く意識していなかった角度から急に刺されました。
正直言って、これが示されたときは「やられた」と思いました。
こうしていい意味で裏切ってくれる作品と出会ったのも、久しぶりでした。
前情報(本作のプロジェクトコード発表から発売前の公式サイトの情報)を集めていた段階では、
三城兄妹のストーリーがメインで、そこにノエルを話題性のために入れたのでは?という邪推をしておりました。
しかしノエルは、ゲーム内で出会った当初とはまるで別人のように
確かな「想い(コイゴコロ)」と「願い(ワガママ)」を持って
最後までメインストーリーに関わることになります。
メモオフ最終作の看板を飾るヒロインとして、まさに文句無し、堂々としていました。
すべてのはじまりは、ただ君を護るために。
どうしてこんなことになってしまったのだろう?
メモオフは、「歩きだしたら戻れない」をいつも突きつけてくる。そう思う。
そして今回はサスペンスチックだったことからも、その色が如実に現れていたのではないでしょうか。
おわりに
今作の印象は恋愛ADVというより、サスペンス。
いい意味で裏切ってくれる物語。
迷わせてくれる数々の選択。
Memories Off は18年の旅を経て、その味を残しつつも新たな形となって結実しました。
過去作のヒロインや言い回しがあったり、ファンサービスもとても嬉しかったですが、
ここから始まっていくメモリーズがあってほしい・・・新規のかたにも是非楽しんでほしい、そう思います。そしてメモオフ沼へようこそしてほしい
メモオフも今、凪の時間が終わるということなのでしょう。
想い続けていれば、願いはきっと叶うと教わりました。
最終作、終わってしまったけど、ひっそりと願い続けていきたい。応援していきたい。これからも。
最後になりましたが、ラストメモリーズセットの特典で名前をスタッフロールに載せていただいております。
メモオフに名を残せたこと、光栄に思います。
制作陣の皆様、素晴らしい作品を本当にありがとうございました。
私は、メモオフに出会えて幸せでした。
(C)MAGES./5pb./Gloria Works