アドベンチャーゲームの入江

アドベンチャーゲーム(ADV)を600本以上持つ筆者が、商業ゲームプランナーの視点からADVを紹介するブログ。ギャルゲーからミステリまでADVならなんでも。

【PS4】『シンソウノイズ』感想~良作・これぞADV、本格ミステリに青春の味!

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【私が、殺した―――】

2/28発売の新作、『シンソウノイズ』。
同日発売作品の中で最も期待していた本作。

適当に学園で恋愛するだけのADVが溢れている昨今に登場したのは、
本格的な謎解きに青春のすれ違いを乗せて見事に描ききった良作だった。

 

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主人公・橘一真は、幼い頃より他人の思考を「声」として聞き取ることが出来た。
その心の声を頼りに、ゆく先々で起こる事件を解決していくという推理物。

但しこの心の声も一筋縄ではいかず、基本的には平板かつ無性別でしか聞き取れないため
誰の心までかはわからない。

謎解きはあらゆる箇所から伏線が張られている。
何気ないワンシーン、日常の中で聞こえたおかしな心の声、微細な変化・・・
それらをどこまでも注意深く観察しないと真相には辿り着けない。
事件が起きてから本気を出すのではなく、それより遥か前から注意していないといけない、
まさに「探偵のロールプレイ」と言えるのではないか。

ただ、本作はポイント&クリック方式ではない。文章や背景、上面図などを頼りに読み解いていく。 

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推理パートでは、これまで心の声を含め見聞きした情報をフル活用し
ひとつひとつ順序立てて謎を解き明かし、真相を目指していくこととなる。

前述の通り、事件前から伏線が張り巡らされているのが面白いところ。
「あの場面にいなかった人物」や「あの行動で得たであろう情報」など
1つ1つのシーンが鍵となってくる。

積み重ねを経て選択をしていくという、アドベンチャーゲームの最も面白い部分が如実に現れている。

また、推理パートにはヒントとなる心の声や、怪しげなシーンの振り返り機能が搭載されており
謎解きへの導線もバッチリ整えられている。
1問につき1つの答えを選択をするだけではなく、1問に対して考えられる可能性・条件を
複数提示しなければならない問いもあり、回答のバリエーションも豊か。


作中において横たわり続ける謎が、主人公が恋をした相手の死。
序盤で死亡したヒロインを前に聞いた「私が、殺した―」という心の声。
主人公は彼女が他殺されたと確信し、その真相に一歩一歩迫ろうとする。

この作中最大の謎に対し、その他の事件・エピソードにおいて
徐々に伏線が張られていっているのが本当に素晴らしい。

最後の最後で、それまでプレイヤーが得てきた情報全てが一本に繋がる構成は圧巻。
これはプレイしないと体験出来ない面白さなので、是非プレイしてほしい。
アドベンチャーゲームはストーリーが鍵となる場合が多いので、
ネタバレや動画で済ますのではなく、自分自身の経験として刻んでほしい。


個人的に「ああ~!」となったのは、2章の犯人指摘の理由。
あのシーンがここで活きてくるのか・・・と驚きました。

つまるところ本作の魅力は、「積み重ね」の構成力・伏線の回収力なんですね。
もうまさにアドベンチャーゲームというほかない。
謎を解いた時のカタルシスを感じるのではなく、
重なっていく物語や描写を一気に貫いて繋げてしまう気持ちよさに魅力を感じますね。
2018年6月の『ISLAND』以来の良作に出会いました。


一応個別キャラのルートもありますが、こちらはオマケ程度の長さ。
個別に入ってしまうと、作中最大の謎から目を背けてしまうので
真相を追い求めたい場合はまずルートに入らないように進みましょう。

でも、ヒロイン達にも彼女たちなりの葛藤があり、
ただ単に「名探偵の主人公くんかっこいいー!好きー!」という
バカみたいな惚れ方をするのではない。
自分のこと、相手のこと、これまでのこと・・・。
色んな「青春の味」が乗った上で彼女たちも迫ってくるわけです。


『シンソウノイズ』、一言でいうと「感動」です。
シナリオに感動、というよりは、
「アドベンチャーゲーム」としての出来に感動です。

積み重ねられた時間を伏線として最大限有効活用し、
「まさかあの場面が・・・」と驚きを与えるその構成力は、
近年市場に溢れる甘ったれた恋愛をするだけの作品と明らかに一線を画す。
これこそまさにアドベンチャーゲーム!と言える作品。


本作は是非、最後の最後の謎が解けるまでプレイしてほしい。
この記事を読んだ方が受信探偵となることを、心から祈っております。
 

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2019.02.28 発売
(C)DMM GAMES/dramatic create

 

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